音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

読書

キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』第二部ノート

愛の労働あるいは依存とケアの正義論作者: エヴァ・フェダーキテイ,Eva Feder Kittay,岡野八代,牟田和恵出版社/メーカー: 白澤社発売日: 2010/08/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 46回この商品を含むブログ (16件) を見るロールズ批判の部分(第二部…

自立と介入の適切な関係とは?(知的障害者福祉をめぐって)

引き続きイギリスの知的障害者福祉の歴史を勉強中。以下の本は、第二次世界大戦後から2001年までの知的障害者をめぐる思想、政策、生活実態、国際比較が網羅的にまとめられていて、基礎知識やイメージを得るうえでとても有益だった。ただし、著者たちはイギ…

マシュー・トムスン『精神薄弱の問題――イギリスの優生学、デモクラシー、社会政策1870-1959』

The Problem of Mental Deficiency: Eugenics, Democracy, and Social Policy in Britain C.1870-1959 (Oxford Historical Monographs)作者: Mathew Thomson出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand発売日: 1998/05/14メディア: ハードカバーこの商品を含…

最近の関心事:トマス・ヒル・グリーンと障害の歴史

今学期も勤務先大学の授業は無事終了。ようやく少し腰を据えて読み書きができそうだ(まだ採点とシラバス執筆が残っているが・・・)。最近は、トマス・ヒル・グリーンの倫理学を少ししっかり読んでいる。人間の本質を「他者と意識を介して関係する」ことに…

R.ホフスタッター『アメリカの社会進化思想』

アメリカの社会進化思想 (1973年) (研究社叢書)作者: 後藤昭次出版社/メーカー: 研究社出版発売日: 1973メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る今度、社会進化論について論文を書くことになったので、基礎文献であるこの本も読んでみた。原著は1944年…

ジョセフ・シャピロ『哀れみはいらない 全米障害者運動の軌跡』

哀れみはいらない―全米障害者運動の軌跡作者: ジョセフ・P.シャピロ,Joseph P. Shapiro,秋山愛子出版社/メーカー: 現代書館発売日: 1999/12/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る日本では今年4月から「障害者差別解消法」が施行されるが、アメリカ…

近藤和彦『イギリス史10講』+今後の研究の方向性について雑感

イギリス史10講 (岩波新書)作者: 近藤和彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/12/21メディア: 新書この商品を含むブログ (8件) を見る 著者の近藤先生には、3年ほど前にケンブリッジの研究会でお会いしたことがあります。史料に対する緻密かつ真摯な姿…

『ウェッブ夫妻とその仕事』

目下、博士論文の新しい章の中身を考えているところです。テーマは決まっており、漠然としたアイデアもいくつか出てきてはいるのですが、なかなかそれらが一つの章としてのまとまりと具体性を持った形には至らず、ここ二週間ほどは、色々読んでは考えあぐね…

『福祉国家の効率と制御―ウェッブ夫妻の経済思想』

福祉国家の効率と制御―ウェッブ夫妻の経済思想作者: 江里口拓出版社/メーカー: 昭和堂発売日: 2008/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (6件) を見る 1980年代以降の福祉国家批判と福祉国家論の転換を受けて、思想史研究の分野…

History of Western Political Thought (Ch.1: Politics and Order)

History of Western Political Thought: A Thematic Introduction作者: John Morrow出版社/メーカー: Red Globe Press発売日: 2005/06/24メディア: ハードカバー クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るNo political thinkers can do without talki…

「社会学的忘却」についてメモ

社会 (思考のフロンティア)作者: 市野川容孝出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/10/26メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 448回この商品を含むブログ (99件) を見る 「社会的な社会」という表現が…有意味であるためには、社会的という言葉が…特定の価…

価値判断(思想)の被制約性と自律性についてメモ

歴史とは何か (岩波新書)作者: E.H.カー,E.H. Carr,清水幾太郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1962/03/20メディア: 新書購入: 14人 クリック: 227回この商品を含むブログ (123件) を見る歴史的事実と歴史家 歴史家と歴史上の事実との関係を吟味して参りま…

超左翼マガジン「ロスジェネ」創刊号

ロスジェネ 創刊号作者: 赤木智弘,浅尾大輔,雨宮処凛出版社/メーカー: かもがわ出版発売日: 2008/05/28メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 117回この商品を含むブログ (36件) を見る刊行当初から気になっていて、ようやく本屋で見つけて買った。どの記事も…

D.キャナダイン著『イギリスの階級社会』

一コ前の記事(もう一か月経っちゃったか…)で、「なんで近代市民革命を最も早く成し遂げたイギリスで、「クイーン」のような王室万歳的な映画がいまだに作られ、しかも人気を得るのか」と書いたが、以下の本を読み、何かストンと腑に落ちた。イギリスの階級…

ロック『市民政府論』も読書中

完訳 統治二論 (岩波文庫)作者: ジョン・ロック,加藤節出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/11/17メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 102回この商品を含むブログ (78件) を見る これも少しずつ読み進めている。とても味わい深くて面白い。半分ほど読んで…

立岩真也著『私的所有論』読み始める

私的所有論作者: 立岩真也出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1997/09/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 33回この商品を含むブログ (42件) を見る 長らくご無沙汰してましたが無事生きてます。博士課程に進学したとはいえ、大学院生生活そのものに変化…

『イギリス史』

ゼミ報告を終えてどうも気が抜けているので、現実逃避に2000年前のイギリスにタイムスリップしてみた。イギリスの政治思想を勉強してるのに、イギリス史についての知識はいまだに高校の世界史並という状況は、まずいなーと思っていた。そろそろ歴史もしっか…

個人的には今イチ−齋藤純一著『自由』−

自由 (思考のフロンティア)作者: 齋藤純一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/12/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (49件) を見る大学で友人と読んだ1冊。「自由」をめぐる最先端の議論が幅広くまとめられている、とは…

「プロレタリア文学」か?でも良い小説です。

日曜日たち (講談社文庫)作者: 吉田修一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/03/15メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (110件) を見る久しぶりに小説を読もうと思い、2002年に芥川賞を取ったという作家、吉田修一の、『日曜日たち…

L.T.ホブハウス『自由主義論』

Hobhouse: Liberalism & Othr Writngs (Cambridge Texts in the History of Political Thought)作者: James Meadowcroft出版社/メーカー: Cambridge University Press発売日: 2008/08/21メディア: ペーパーバック クリック: 9回この商品を含むブログ (2件) …

STAYリバース双子座の女

なかなか更新できなくて、申し訳ないです。最近は去年1年間の間に拡散した興味関心を、何とか絞込もうと悪戦苦闘している日々。たまに上の代の人々の立派な修士論文を眺めて、自分を奮い立たせている。ところで最近、こんなマンガを読んだ。双子座の女―Stay…

生松敬三著『社会思想の歴史 ヘーゲル・マルクス・ウェーバー』+G.A.コーエン

社会思想の歴史―ヘーゲル・マルクス・ウェーバー (岩波現代文庫)作者: 生松敬三出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/11/15メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 52回この商品を含むブログ (17件) を見る 1969年に出版された本の2002年度文庫版。実家の本棚…

間宮陽介著『ケインズとハイエク』

増補 ケインズとハイエク―“自由”の変容 (ちくま学芸文庫)作者: 間宮陽介出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/11メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 52回この商品を含むブログ (26件) を見る 1989年に出たものの増補版。各章で議論の雰囲気がそれぞれ大き…

同性愛をめぐる価値対立をリベラリズムは克服しうるか?−論文「リベラリズムの困難からフェミニズムへ」 (岡野八代)を読んで−

フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張)作者: 江原由美子出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2001/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る(2001年発行) ジェンダーの授業で、先生に勧められて読んでみた。岡…

誠実さの欠如した「お勉強」本−盛山和夫『リベラリズムとは何か』(一部追記あり)−

リベラリズムとは何か―ロールズと正義の論理作者: 盛山和夫出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2006/06/01メディア: 単行本 クリック: 44回この商品を含むブログ (49件) を見る(2006年発行) ゼミ発表に使えるかと思って一応通読したが、この本で展開される著…

稲葉振一郎『経済学という教養』を読んだ

経済学という教養作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2004/01/10メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 119回この商品を含むブログ (111件) を見る ゼミ発表の準備をしようと思って図書館に行ったが、気分転換に、と手に取った『経済学…

イプセン『人形の家』を読んだ

注:本文の引用あり ちょっと前に紹介した小説、「GO」(金城一紀作)のなかに、次のような文章があった。 僕は小説の力を信じてなかった。小説はただ面白いだけで、何も変えることはできない。本を開いて、閉じたら、それでおしまい。単なるストレス発散…