間宮陽介著『ケインズとハイエク』
増補 ケインズとハイエク―“自由”の変容 (ちくま学芸文庫)
- 作者: 間宮陽介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 52回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
1989年に出たものの増補版。各章で議論の雰囲気がそれぞれ大きく異なり(例えば第3章は思想・哲学的な論調だが、第4章は経済学的、そして終章は一転、社会学的な論調になる!)、頭を切り替えるのが結構大変だったが、なかなか勉強になった。
第2章「自由主義と自由放任主義」、第3章「ハイエクの自由論」の各章が特に面白かった。古典的自由主義といわゆる新自由主義との違いが理解できる。ハイエクの自由主義思想も、けっこう奥が深そうだ。また第4章「自由のディレンマ」では、貨幣経済論にのみ限定してケインズを論じている。そのためこの章でのケインズ論は、ハイエク思想を体系的に論じた第3章との対比にはなっておらず、『ケインズとハイエク』という題名から両者の議論の比較を期待した者としては、個人的に少し不満が残った。
また大衆社会論に則って著者の持論を展開した終章と補論は、やや説得力に欠ける。「〔教会、学校、家族、労働組合などの〕中間団体の消失」(226)を、新自由主義の内にあるファシズム的傾向を示す根拠だとする著者の主張は、社会学的議論としては、少し乱暴すぎるように思える。確かに市場原理の浸透によって、既存の中間団体(例えば労働組合)が弱体化するという事態は、これまでに見られたことかもしれない。しかしそれを一律に、中間団体の「消失」と切ってしまうことはできないのではないだろうか。例えば昔読んだアンソニー・ギデンズの『親密性の変容』なんかには、現代の家族がこれまでの形態とは異なった、より民主的な方向に進む可能性が書かれていたような気がする。それは間宮氏の言う中間団体の「消失」などとは、程遠い事態である。
- 作者: アンソニー・ギデンズ,松尾精文、松川昭子
- 出版社/メーカー: 而立書房
- 発売日: 1995/07/05
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 70回
- この商品を含むブログ (25件) を見る