音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

『ウェッブ夫妻とその仕事』

目下、博士論文の新しい章の中身を考えているところです。テーマは決まっており、漠然としたアイデアもいくつか出てきてはいるのですが、なかなかそれらが一つの章としてのまとまりと具体性を持った形には至らず、ここ二週間ほどは、色々読んでは考えあぐねています。そのうち議論の流れが見えてくるものと信じて、今は地道にノート作成に励みます。でも、今日次の本を図書館で借りて少し読んだことで、少し方向性が見えてきたような気もしました。


Webbs and Their Work

Webbs and Their Work

ビアトリスとシドニーカップルは、イギリスの歴史上きわめて稀な存在であり、今後も二度と出てこないように思われる。・・・彼女たちのパートナーシップは、その業績においてそれほど完璧かつ平等なものであった。(byマーガレット・コール、ix頁)

シドニー・ウェッブが亡くなった翌々年(1949年)にマーガレット・コールによって編集された、ウェッブ夫妻に関する追悼評論集です。第一章「フェビアン協会の初期」(バーナード・ショー)、第十六章「政治思想とウェッブ夫妻」(レオナード・ウルフ)、第十七章「経済学者としてのビアトリス・ウェッブ」(G.D.H.コール)を読みました。ヴァージニア・ウルフの夫でフェビアン協会員だったレオナード・ウルフによる、ウェッブ夫妻へのかなり激しい批判が印象的でした。逆に、若い頃はギルド社会主義の観点から夫妻を「官僚主義的」と批判したコールが、ここではビアトリスのことを「誤解していた」(280頁)と告白している点も興味深いです。

彼女〔ビアトリス〕の本質は〔官僚主義にではなく〕ヴォランタリーな組織、つまり生産者と消費者の組織への共感にあった。また多様性をもたらすさまざまな試みを社会が必要としていることも、彼女は充分認識していた。私は少しずつこうした彼女の根本的なものの見方が分かるようになり、これまで思っていた以上に、それが私の見方とも非常に近いものであることに気づいたのである。(by G.D.H.コール、280頁)

またバーナード・ショーは、シドニー・ウェッブがマルクス資本論』第一巻をわずか一時間で読み通し理解したというエピソードを紹介しています(6頁)。本当だとしたら、やばい頭の良さです・・・

第一級の執筆陣を揃えていることもあり、この本からは社会科学者としてのウェッブ夫妻の魅力が十分に伝わってきました。彼女たちの思想をもう少し追っていきたいと思います。