音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

近藤和彦『イギリス史10講』+今後の研究の方向性について雑感


イギリス史10講 (岩波新書)

イギリス史10講 (岩波新書)


 著者の近藤先生には、3年ほど前にケンブリッジの研究会でお会いしたことがあります。史料に対する緻密かつ真摯な姿勢が印象的で、短い時間でしたが、歴史家に必要な研究態度を間近で学ばせていただきました。と同時に、私は自分の研究態度に見られる方法の面での拡散性と、問題関心の面での限定性ゆえに、先生のような緻密な方法と総合知の高度な統合を実現するいわゆるhistorianにはなれないなあと思わされました。
 この本は、そうした近藤先生の該博な知識が、抑制と、そして少しの皮肉のきいた筆致を通して存分に展開されており、読み物としてもとても魅力的な一冊になっています。先史から20世紀末までのイギリス通史を、新書という薄さで、しかも密度とクオリティを犠牲にすることなく書ききるその力量には脱帽させられます。

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 先日、研究者仲間の某さんとお茶をご一緒しました。そのときの会話から改めて思わされたこと、それは、今後研究していきたいと思っているテーマの多さに比して、時間(そして人生!)の何と限られていることか、ということでした。このブログでも何度も繰り返してしまっていますが、昨年春に、大学の教壇で教え始めてから、そして子どもが産まれてからは、特にこの思いを強くしています。イギリス留学時代は、本当に貴重な時だったのだなあと思います。
 でも、いつまでもこのように言い訳や後ろ向きの姿勢ではいけませんので、限られた時間の中で、今後、自分の研究で費やすべきエネルギーの配分について、少し考えてみました。今後はだいたい以下のような配分で、研究を進めていこうかな、と思っています。

1.イギリスの政治思想史・社会思想史・倫理思想史 50%
2.イギリスの社会政策史・社会福祉史 30%
3.イギリスの政治史・経済史・社会史 20%

 1は、博士論文も含めて、これまで自分が(不十分ながらも)研究してきた分野です。ただ、実は大学院に進学した頃から、漠然とながらも自分が目指してきたのは、「イギリスの社会保障社会福祉について、思想と歴史の観点から何がしかを言える研究者」でした(これまでのところ全然できていませんが…)。この目標のためには、今後、2と3にももっと力を注いでいかなければ、と思っています。今日のところは2について、以下に今後読んでいきたい(読まなければならない)本を、いくつかメモしておきたいと思います(順不同。随時追加予定です)。


The Origins of the British Welfare State: Society, State and Social Welfare in England and Wales, 1800-1945

The Origins of the British Welfare State: Society, State and Social Welfare in England and Wales, 1800-1945

Disability and Social Policy in Britain since 1750: A History of Exclusion

Disability and Social Policy in Britain since 1750: A History of Exclusion

Poor Relief and Charity 1869-1945: The London Charity Organisation Society

Poor Relief and Charity 1869-1945: The London Charity Organisation Society

Colonialism and Welfare: Social Policy and the British Imperial Legacy

Colonialism and Welfare: Social Policy and the British Imperial Legacy

Women in British Public Life, 1914-50 (Women And Men In History)

Women in British Public Life, 1914-50 (Women And Men In History)