音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

行きつけの美容院が閉店し、色々考える。


学部生の頃から行きつけだった美容院が、突然閉店した。いつものようにカットの予約を入れようと電話したら、「7月で閉店しました」という録音が流れてきた。国立市は美容院が乱立していて、競争が大変そうだと常々思ってはいたのだが、まさかつぶれてしまうとは。。。なじみだった美容師さんが今どうしているのか、気がかりだ。


仕方がないので、新たなお店を開拓しようと、ネットでいろいろと探してみた。そこで分かったことは、国立市が、日本有数の美容院の乱立地域だということだった。確かに駅の周りには、思いつく限りでも十数件の美容院が、通りを連ねている。国立には、とりわけおしゃれに気をつかう人が多いのだろうか。


それだけではなさそうだ。最近気がついたのだが、私の実家の田舎町でも、ここ数年、新たな美容院が、何軒もオープンしている。しかし、いかんせん田舎なので、どこもそれほど繁盛している様子はない。その一方で、昔からあった美容院や床屋さんが閉店してしまうのを、よく目にするようになった。


美容院の数が増え、競争が激しくなると、サービスの質が良くなり、値段も安くなるという利点はあるかもしれない。それは、私たち利用者にとっては、望ましいことだ。しかしこうした傾向によって、ともすれば、美容師の職が不安定なものとなり、給料も安く抑えられ、逆に求められるスキル(カット技術はもちろん、社交性や、体力など)の水準は上げられ、全体として、美容師を取り巻く環境が、より過酷なものとなる恐れはないだろうか。


美容師になるためには、国家試験の合格が必要だという。このことは、合格者数の調整によって、美容師の数の調整が、ある程度可能だということを意味している。では、果たして現在の美容師の合格者数は、世間で必要とされている美容師の数と、マッチしているだろうか。地元で乱立する空いた美容院のことを思うと、大いに疑問だ。


ためしに総務省の統計を見てみた。美容師資格の合格者数は、2000年以降、それ以前に比べて約2倍で推移するようになっている。美容師の数の増加が、政策的に後押しされていることが分かった(http://www.stylist.co.jp/bs_bb-data2006-01.html)。美容師の合格者数が増えた背景には、仕事の大変さを承知の上で、「それでも美容師になりたい」と思う若者が増えたという、供給側の要因もあるのかもしれない。しかし現場の厳しさは、そうした進路選択中の若者に、どれだけ伝わっているのだろうか。華やかなイメージだけが、安易に強調されてはいないだろうか。


色々と好き勝手書いてしまったが、ともあれ、合格者数の拡大という傾向が、美容院間の競争を激化させ、美容師の職を不安定なものにしている一因であると言えそうだ。ここには、美容師の数を増やすだけ増やしておいて、「後のリスクは自己責任で」という、現在大学院でも進行中の事態と同様の風潮を、個人的には感じてしまう。