音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

ベルファストでの学会報告

先日、北アイルランドの首都ベルファストまで学会に行ってきました。電車とバスと飛行機を乗り継いで、カーディフから片道6時間あまり。同じイギリスとは言え、気分はほとんど外国旅行でした。道中は同じ研究科の台湾人の友人と一緒だったので、退屈せずにすみました。ベルファストカーディフ同様こぢんまりとした、住みやすそうな街でした。今年はタイタニック沈没百周年(何がめでたいのかよく分かりませんが)とのことで、造船・出航地であったベルファストの街には、至るところでディカプリオ&ウィンスレットの3D映画ポスターと、オープンしたての「タイタニック博物館」の宣伝が見られました。

学会での私の報告は、当初は「イギリス理想主義」パネルの二日目に割り当てられていました。が、初日の一番手に報告予定だったアメリカ人研究者の到着が遅れ、私がその人の代わりに報告することになってしまいました。予想外のハプニングでとまどいましたが、ピンチヒッターということで温かい目で見守って頂けたこともあり(笑)、何とか報告を終えることができました。出発前にプレゼンの練習を少ししておいて、本当に良かったです。内容的には、政治学の学会だったにもかかわらず社会学史的な話になってしまいましたが、オーディエンスには「持続可能な開発」を哲学的に研究している先生もいて、その方がとても面白かったと褒めて下さいました。また、到着が遅れたアメリカ人研究者の方からも翌日コメントを頂戴しました(ありがたいことに学会サイトにアップしていた私の原稿に目を通して下さったようです)。「進化」概念の思想史的な位置づけなど、非常に重要な点をいくつか指摘して下さいました。

夕食は一緒に来た台湾の友人と、T.H.グリーンを研究してるダラム大の大学院生さん、あと理想主義研究者の先生方二人を交えて、事前に調べて私が注目していたGinger Bistroというレストランに行きました。何でも、某誌で2011年北アイルランドのベスト・レストランに選ばれたお店だとのことです。実際、私が頼んだ「煮込みローストポーク」(写真参照)は素晴らしかったです。これまでイギリスで食べた中でも三本の指に入る美味しさだったので、その感動を他の人とも共有したかったのですが、なぜか一緒にいたイギリス人の方々の反応は今イチで、叶いませんでした。普段彼らはよっぽど美味しいものを食べているのか、私の頼んだ料理だけ美味しかったのか、それとも彼らは食にあまり関心がないのか、よく分かりませんでした。(ただ、あとで台湾の友人だけは「とても美味しかったね!」と言ってくれたので、三番目である可能性が高いように思われます…。)

レストランのホームページはこちら。直訳すると「生姜食堂」。美味しそうな名前かと言われれば、微妙ですね・笑。

何はともあれ、今回は留学中にイギリスで行える最後の学会報告でしたが、無事に終えることができてほっとしています。こちらの学会に参加し続けたのは実質一年間という短い期間でしたが、それなりに場慣れすることができ、またBritish Idealismの研究者とのネットワークも広げることができた、とても有意義な一年間でした。英語でのネイティブ並みの自然な議論(しかもユーモアも交えて!)はまだ全然駄目ですが、自分の関心のある分野でのディスカッションには、大分ついていけるようになりました。今後はこちらで培ったネットワークを大切にしつつ、自分の研究をいかに日本の政治・社会思想史研究の文脈に位置づけていくべきかという、帰国後に問われるであろう重要な問題も考えていきたいと思います。