音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

保守党キャメロン党首のチャリがパクられる&マイチャリin B'hamの思い出



http://ukmedia.exblog.jp/9290674/
(数日前のニュースですが…。)


http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7527403.stm
(無事、発見されたようです。)


ネタとしてかなり面白いと思うが、同情を集めるための支持者による自作自演説も捨てがたい。でもチャリを盗まれるような頼りないリーダーに統治してほしくないと思うイギリス人も多いだろうから、自作自演説は弱いだろう。いやいやコワモテのブラウン首相に対して、ソフト&エコ&庶民派路線を売りにするキャメロン党首だからこそ利用できるネタだ、などなど憶測が憶測を呼びますね。


ところでイギリスの自転車と言えば、私にも苦い思い出がある。上のニュースを読んでたら色々思い出したので、ここに書いておこう。2004年にイギリスにいた時に、私も中古の自転車を買ったことがある。イギリス人は大学生も含め、ほとんど自転車に乗らないので、大学のキャンパスで颯爽とチャリを漕ぐ私の姿は、非常に目立っていた。ちょっと恥ずかしかったけど、実際に乗ってみると、とても便利&快適で、時間通りに来ることが皆無の公共バスなどよりも、ずっと頼りになった。'Apollo'と車体に書いてあったのでアポロと名づけ、留学の間、末長く大事にするつもりでいた。




(↑買った当日のアポロ号)


だがアポロは不幸な遍歴を辿った。学生寮の駐輪場に置いておいたら、2日後には、ハンドル部分のギアがすべてもぎ取られていた。ありえねーどんだけ治安悪いんだYO!と嘆きつつ、それでもギアなしで乗っていたら、ある夜、向こうの通りから歩いてきた屈強な白人男性3人が、私を見るなり"GET THE BIKE!QUICK!!(あのチャリを奪え!早くしろ!!)"と叫び、突進してきた。あの時の恐怖は今でも忘れられない。その時の私はおそらく中野浩一さん並みのスプリントを、火事場のクソ力で出していたのだが、なにしろギアは軽いところから変えることができなかったので、シャコシャコ言うだけで全然スピードはでない。下り坂にたどり着き、追っ手を振り切ることができるまでの十数秒、ほんとに生きた心地がしなかった。


結局アポロの命は2ヶ月弱だった。大学の校舎裏にいつものように止めていたら、ある日サドルが外されていた。私は泣く泣く、寮の駐輪場まで押して帰った。おそらくアポロは、今もその駐輪場に放置されたままであろう。そこには同じような壊れた自転車が、たくさん置いてあったのだ。どれも主人が戻ってくることを信じているかのように、静かに佇んでいた。だからアポロのことを考えると、今でも胸が痛む。でも一緒にいた2ヶ月の間、私はアポロに連れられて、バーミンガムの色々な場所をめぐることができた。そこで見たこと聞いたことが、私にとっての社会科学の出発点となった。留学ではいろいろ貴重な出会いを経験したが、私にイギリスの様々な側面を見せてくれたアポロとの出会いは、その中でも特に大切なものの一つとなった。そんなわけでアポロを悼みつつ、日本にいる今でも、私はチャリしか運転しないのだ(自動車免許が無いせいもあるけど)。