音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

Viva受かりました

二週間のイギリス滞在もあっという間に終わり、先ほどヒースロー空港近くのホテルに辿りつきました。博士論文の口頭試問(Viva)に加えて、ロンドンでの資料収集、そしてカーディフとシェフィールドでの旧友との再会など、大変充実した二週間でした。帰国後はまたけっこう忙しく、4月1日早朝に成田空港に着き、その足でお世話になる非常勤先の大学のミーティングに直接行く必要があります。その後はすぐに自宅に戻って入院中の妻を迎えに行かなければなりません。3月中に帰れるスケジュールにすれば良かったかな…と少し後悔していますが、長く滞在した分イギリスで大切な時間を過ごせたので、まあ仕方ありません。機中ではできるだけ休めるようにしたいと思います。

Vivaには無事に合格し、晴れて学位を頂くことができました。前回の記事に表れているように最初はかなり不安を覚えていたのですが、試験前日に第一指導教官の先生が自宅に泊めてくれ、奥様ともども温かいもてなしをして下さいました。おかげで緊張をずいぶんほぐすことができました。

試験場の雰囲気も、幸運なことに全体的にリラックスしたものでした。指導教官のお二人に出席して頂いたことも大きかったのだと思います。私のパフォーマンスの感想をあとで聞きたかったことと、そばにいてもらうことで心強く感じるのではないかと思い、彼らの出席も希望していたのです。もちろん彼らの発言は許されなかったのですが、最初はやや張りつめていた会場の雰囲気の(そして私の緊張の)緩和にプラスに働いたと感じました。

試験官の先生方も、ことさらに問題点をあげつらうのではなく、議論を建設的に発展させようとして下さっているのが分かりました。私の博論は外部審査員の先生と異なるアプローチを取るものだったのですが、先生はそのことで気分を害している様子もありませんでした。事前に指導教官から聞いていた通り、非常にフェアな先生だと感じました。外部審査員の選択に当たっては、研究分野のみならず人格的な面も考慮に入れることが大事だと改めて思いました。

とは言え、約二時間の試験の中では厳しい質問もいくつか寄せられ、回答に苦労することも多々ありました(たとえば思想家の理論と実践論の関係についての私の知見の甘さや、思想家間の言葉の共有と概念の共有を時に混同する傾向など…)。いずれも私の論文の弱点を的確に突いた質問で、今後の研究にとっても非常に示唆的なものでした。

事前に指導教官の先生からは、答えに詰まったら無理に変な回答をするよりも、素直に「その点は充分に考えてなかったので今後の課題にしたい」と答えるべきだとアドバイスを頂いていました。おそらくよく知らない点での質問にもストレートに答えようとして墓穴を掘ってしまうという、私が学会で何度か犯してしまったミスを念頭に置いてのことだったと思います。しかし、viva当日はこのアドバイスはすっぽりと頭から抜けてしまい(笑)、全ての質問に何らかの回答をしようと頑張ってしまいました。おかげで答えがしどろもどろになってしまうことも何度かありました。ただちゃんと質問に回答しようと心がけたことは、全体としてはよい結果につながったと思います。試験後、「論文内の分析は時にsubtletyを欠く部分もあったが、試験中の君の回答は非常に丁寧で、おかげで議論を大いに楽しめた」との講評を頂けたからです。結果として修正なしの合格という、予想外に良い評価を頂けました。

これでホブハウス研究がひと段落したわけでは決してなく、審査員の先生方に指摘された点をさらに深め、英語での投稿論文執筆のために、そして願わくば、将来的には書籍の形に研究をまとめていくために、ホブハウスとはもう少し付き合っていきたいと思います。ともあれ、三年間の留学で頑張ってきたことが学位という形に繋がったことはとても良かったです。途中で留学先の大学を変えなければいけなかったり、パートナーとの遠距離の関係に悩んだりといろいろあったイギリス留学ですが、それらはすべて自分の成長に繋がったと感じます。これで留学は名実ともに終了しました。心おきなく春からの日本での仕事と子育てに(もちろんさらなる就活と研究にも)力を注ぐことができます!皆さま今後ともどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m