音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

Viva直前

博士論文の口頭試問(viva)を金曜日に控え、18日からイギリスに来ています。およそ8か月ぶりの渡英ですが、Vivaのことで頭がいっぱいになってしまっていて、あまり感慨にふけることができないでいます。ロンドンでは半日をLondon School of Economicsの図書館で資料収集に充てたあとは、同大学のカフェテリアでひたすらVivaの準備を行ってました。そして今日はカーディフに移動、いよいよあさってはここで試験か〜と思うと、自然と緊張感も高まってきます。

少しずつ想定問答集を作るなど準備はしているものの、正直気分は「まな板の上の鯉」です。よくVivaを乗り切るコツとして言われるアドバイスの一つに、「あなたは三年以上ひとつの研究テーマを追求してきたのだから、博士論文を提出した今は間違いなく審査員よりもそのテーマについてよく知っている。だから自信を持って試験に臨みなさい」というのがあります。しかし私に限って言えば、このアドバイスは全く当てはまりそうにありません。Vivaの外部審査員は私の研究領域の権威と言ってよい先生で、私の指導教官によれば、その先生は私の研究対象の思想家のテキストを、私的な手紙類以外は全部読んだことがあるのだとか。しかもその思想家は彼の主要な研究対象ではないという。。。とてもかないそうにありません。もうどんなに準備をしてもそれは釈迦の掌の上で踊る孫悟空のようなもので、悪あがきに過ぎないのではないかという、投げやりな気分にともすればなってしまいます。

でも投げやりになってしまってはだめでしょう。私がイギリスに来ている間は、医師から安静を命じられている妊娠中の妻には病院に入院してもらう不便をかけていますし、渡英直前の3月中旬、国際ワークショップへの参加のために来日していた私の指導教官の先生方は、過密スケジュールで疲れていたにもかかわらず、多くの時間を割いてVivaを乗り切るアドバイスを私にして下さいました。また言うまでもありませんが、そもそもこの年齢まで学生を続けていることで、親をはじめ家族にはこれまで心配をかけ続けっぱなしです。月並みな言い方ですが、迷惑をかけている人たちや支えてくれる人たちのためにも、ちゃんと準備して試験に臨む責任が自分にはあると感じています。また、自分の研究の全体像をこの道のエキスパートにじっくり理解してもらい、数時間もそれについて議論してもらう貴重な機会など、この先の人生ではおそらく無いことでしょう。自分自身にとっても最大限有意義な時間にするよう、最後まで「悪あがき」しておきたいと思います。