音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

研究の進め方

博士論文の新しい章に入って、再び研究にかなり苦しんでいます。文献を読んでノートは取っていても、なかなか論文の執筆に入れません。こう歩みが遅いと、自分の研究の進め方にどこか悪いところがあるのではないか、とも思うようになります。後々の反省の材料にするためにも、以下に、いま自分がどのように思想史研究を進めているのかを、振り返って簡単にメモしておこうと思いました。ここはまずいんじゃないか、などご意見がもしありましたら、アドバイスを頂けると嬉しいです。

研究の順序:
1.最初に自分なりの理論的観点を持っておく(研究対象に対する自分なりの「問題関心」に基づいて)。また、その観点に基づいて何をどう論じたいのか、議論の大枠をイメージしてノートしておく(「仮説1」)。
2.「仮説1」の検討のために重要と思われる先行研究を用意する。(「文献収集1」)
3.先行文献のレビュー。すると、「仮説1」が不十分だったり、誤っていたり、またはすでに充分検討されてしまっていることに気づかされる。
4.「仮説1」をどう修正すべきか、レビューを続けながら、考える。その結果、「仮説1」の修正・発展版として、「先行研究では不充分にしか検討されておらず、重要と思われる論点」が見つかる。これを「仮説2」として、内容をノートする。
5.「仮説2」の検討のために重要と思われる、一次文献を用意する。(「文献収集2」)
6.一次文献の読解を進める。「仮説2」を補強する部分、それに反する部分、その他関連する部分を、ひたすらノートする(「材料」の収集)。
7.6と同時並行的に、「仮説2」をどのような論文構成で「料理」するか、を考える(「レシピ」の作成)。 6を進めると同時に、なるべくどんどん具体化させる。
8.「材料」と「レシピ」がある程度揃ってきたと思ったら、論文の執筆を始める。
9.「材料」と「先行研究」とにらめっこしつつ、執筆を続ける。議論が弱いと思ったら、随時6と7に立ち返って、「材料」の増加、「レシピ」の補強に努める。
10.「締切」に間に合うよう、論文執筆を終わらせる!

普段は意識することはありませんでしたが、どうやら私は以上の10ステップにそって各章の研究を進めているようです。もちろん、二つ以上のステップを同時に行うこともあります(例えば「文献収集」の1と2を同時に行ったり、先行研究と一次文献を同時に読んだり)。

一番苦しいのは、やはり自分なりのオリジナリティが求められる、4の「仮説」構築と、7の「論文構成」の部分です。ここでは、ひたすら考えなければいけません。歩きながら、ご飯を食べながら、夜寝る前等々・・・

次に苦しいのは、3と6のテクスト読解の部分です。これはテクストが理解できて面白いことが書いてあると、とてもエキサイティング!な気分になれるところなのですが、大抵は(特に6では)、「何が言いたいのかさっぱり分からん…」、「何度も読み返してようやく理解できたのに、あまり役には立たなそう…」と、しんどく、またはがっかりする気持ちに駆られつつ、読解を進めていくことになります。

2と5の文献収集の部分にも、苦労させられることしばしばです。泊りがけで他の大学まで行かなければならなかったり、本が届くのを何日も待ったり、延々と資料のコピーに時間を費やしたりと、時間とお金がかかります。結局、全部のステップが苦しみを伴います・笑。

でもひとまず10までこぎつけた時の達成感や、テクスト読解を通して新しい知見を得られた時の知的興奮は何ものにも代えがたいですので、研究は苦しいながらも、やはり楽しいです。

目下の私は、どうやらまだ4あたりをうろうろしているようです。これまでは3の段階として、主にハーバート・スペンサーの社会思想に関する先行研究のレビューを進めてきたのですが、最初に持っていた「仮説1」は、やはりレビューを通じて大幅な修正を余儀なくされました。そこでかなり時間を取られたことが、今の自分の焦りにも繋がっているようです。

でも、今日はようやく少し「仮説2」を構築できそうかな、という感覚を得られた気もします。気のせいでなければ良いのですが…。これを励みに、明日からもう少しペースを上げていければと思います。


Herbert Spencer: The Evolution of a Sociologist (Modern Revivals in Sociology)

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Social and Political Thought of Herbert Spencer (Oxford Historical Monographs)

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Men Versus the State: Herbert Spencer and Late Victorian Individualism (Oxford Historical Monographs)

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Equal Freedom and Utility: Herbert Spencer's Liberal Utilitarianism (Ideas in Context)

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An Intellectual History of British Social Policy: Idealism Versus non-idealism

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思想としての社会学―産業主義から社会システム理論まで

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