音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

橋下市長による大阪市職員アンケートについて

マスコミでも話題になっているようですが、大阪市の橋下市長が、市職員に対して「労使関係に対する職員のアンケート調査」を実施したそうですね。アンケートの現物レイバーネット日本にアップされていたので見てみたのですが、報道でも批判されているように思想統制憲法違反としか思えない内容で、非常に恐ろしいと感じました。

冒頭にあるように、アンケートの直接の目的は、地方公務員法の定める公務員に認められた政治活動の範囲を逸脱した職員を見つけ、何らかの形で処罰することにあるようです(「調査・実態解明」の上、「膿を出し切」ると表現されています)。

しかし設問には、「これまで労働条件に関する組合活動に参加したことはあるか」(Q6)、「この2年間に特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるか」(Q7)など、政治活動一般や組合活動一般についての回答を強制するものも含まれていました。職員の違法行為のみならず、憲法で保障された政治的権利労働基本権そのものも制限しようといった意図が見て取れます。

「真実を記載することで、職場内でトラブルが生じたり、人事上の不利益を受けたりすることはありませんので、この点は安心してください。」とありますが、回答する職員の人々は、この言葉をどこまで信用するでしょうか。「建前と本音」を察して、「そうは書いてあっても、何かの時に処分の原因となるかもしれない。無用なリスクは犯すまい」と考え、法的に問題無いはずの政治活動や組合活動までも控える人々が、今後増えてしまうのではないでしょうか。

私がとりわけ危惧するのは、このような思想統制を平気で行おうとする政治家が国民の支持を集めていくなかで、働く人々の権利や政治参加の意義を軽視する風潮が、日本社会にますます広がってしまうのではないか、ということです。それは人々の福祉の向上や日本の政治の成熟とは反対の方向を向くものであり、日本社会のさらなる停滞に繋がってしまうように思います。

昨日になって橋下市長は態度を軟化させたようです。はじめに極端な要求をして、交渉の中で徐々にハードルを下げていく、彼一流の「言論テクニック」(中島岳志)がここでも発揮されているのかもしれません。ともあれ、彼が人々の思想統制をも辞さない危険な側面を持った政治家だということが、今回の一件で明らかになったように思います。都構想や脱原発への理解には評価すべき点もあるのかもしれませんが(勉強不足でフォローできていませんが)、少なくともこの一点において、橋下市長は批判されるべきだと考えます。