音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

新章開始

投稿論文の仕上げにひとまずけりがついたので、博論の第三パートのリーディングに早速取りかかろうと思います。いよいよ最後のパートですが、留学全体のスケジュール的に言えば、正直ちょっと遅れ気味です。来週指導教官の先生と会うので、今後の見通しについても少し話してこようと思います。

第三パートは他のパートと同様、二章分になる予定で、テーマ的にはお互い密接に関係しているので、できれば同時並行的に研究を進めたいと考えています。もとはと言えば、PhD留学の一年目に博論計画の中心テーマに据えていた部分でした。その後テーマと論文構成を微妙に変えたことを受けて、第一、第二パートを最初に書く必要が出てきてしまい、二年目から今まではそれらにかかりきりでした。今になってようやく、当初関心のあった課題に帰ってこれたという感じです。

内容としては、ホブハウスとその周辺の初期イギリス社会学の研究になる予定ですが、非常に関連すると思われる、近日公刊予定の研究書を発見しました。


British Sociology's Lost Biological Roots: A History of Futures Past

British Sociology's Lost Biological Roots: A History of Futures Past

著者のChris Renwick氏は、リーズ大学で博士号を取った後、2010年からヨーク大学で教鞭を取っている、新進気鋭の歴史家のようです(1980年生まれ。若い!)。世紀転換期のイギリス社会学を生物学との関係という観点から分析しているようです。大学の教員紹介欄によれば、20世紀イギリスにおける社会科学と自然科学の思想的・方法論的関係の解明という、非常に興味深い問題関心を持った方だということが分かりました。今後、研究をフォローしていく必要がありそうです。

初期イギリス社会学史のもう一つの必読文献としては、


British Idealism and Social Explanation: A Study in Late Victorian Thought (Oxford Historical Monographs)

British Idealism and Social Explanation: A Study in Late Victorian Thought (Oxford Historical Monographs)

が挙げられます。こちらは、ボザンケとリッチーなどのイギリス理想主義哲学者と社会学の思想的交流の様子を描き出しています。

私としては、当時のイギリス思想界における二大知的フレームワークであった、生物学と理想主義哲学の接点を「進化」概念に見出しつつ、当時の社会学者や哲学者が進化思想を通じて構築した、シティズンシップ論や社会改革論の特徴を浮き彫りにしたいと考えています。これまた険しそうな山ですが、歩みを止めずに登っていきたいと思います。