音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

古書店店員歴1年になった

都内の某古書店でアルバイト店員として働き始めて、今日でちょうど1年になった。
古書店で働いてて一番嬉しい瞬間は何かって?そりゃーやっぱり「この本、ずっと探してたんだよ〜」と
興奮まじりに本を持ってきた時の、お客サマの笑顔です笑。


これまでで特に印象深かったのは、40代前半とおぼしき、イギリス人の白人男性のお客さんだった。
何でも日本刀のコレクターだそうで、店員の私ですら把握していなかった棚の奥の奥から、
日本刀に関する古い図録を引っ張り出してきた。発行年を見ると、「寛永〜年」と書いてある。
え…江戸時代?


そのお客さんはこう語った。「ワタシいぎりすでこの図録の解説本持ってマース。まさか実物に出会えるなんて…。
あさって国に帰らなきゃいけなかったけど、いや〜本当にラッキーでしたよ〜。
(注:何か「ピューと吹く!ジャガー」に出てくるいろんなキャラみたいな語り口になってしまったが、
実際に使用された言語はイングリッシュでした笑。「ジャガー」知らない方スミマセン)。」
そう言って何百年も前のボロボロの本を買ってった。お会計1万5000円なり。


今日来た初老男性のお客さんも、レーピンという人が書いた『ヴォルガの船ひき』という本を買っていった。
本の表紙には、高校の世界史で習ったかの有名な絵が↓


そのお客さんは、「この本はずっと探してたんだが、私は高校生の頃にこの絵を初めて見て、とても感動したんだ。
特に真ん中に立つオレンジの衣をまとう人物を見なさい。この人物だけ、色も、ポーズも、周りの人々と何故だか
全然違うでしょう。それを発見したときの感動といったらもう…(目を輝かせる)。それ以来、私はロシア美術の
世界にのめり込んでしまったんだ。」とレジでとうとうと語った。


ネットでの本の検索&販売が広まるにつれて、こういったお客さんと本、そしてお客さんと店員との
やりとりは、だんだんなくなってしまうのだろう。一店員としては寂しい気もするが、それでも未知の本との、
古書店での偶然の出会いという魅力はなくならないと思う。大学の先生が言っていたことだが、本屋さんや
図書館で、ふと何気なく手に取った本があなたの人生を変えるかもしれないのだ。それをイギリスでは
「図書館で(古書店で)あなたにエンジェルがささやいた」って言うんだって。う〜んロマンチックだね。